01 / 絶望を目撃した日
絶望を目撃した日
自分の上に覆いかぶさる掛け布団を一気にどかし、俺は目覚めた。
悪夢を見て飛び起きたわけではなく、普段からこういう起き方をしているのだ。おかげで朝は一発で目覚める事ができる。
頭が完全に起きるまでの数分間、窓の外の太陽を見つめ、ベッドから降りて一階のリビングへ向かった。
部屋の中央にあるテーブルの上に、朝食と新聞が置かれていた。両親が朝早くから出掛けてしまうため、朝はいつも一人で過ごす。
つけっ放しになっていたテレビでは、今日も飽きずに殺人事件やら事故で人が死んだというニュースが流れている。 俺はそのニュースをBGMに、丁寧に折りたたんであった新聞を一通り読むことにした。
記事の一面は議員の汚職事件。
国のお偉いさんが頭を下げる姿は嫌というくらい見せられてきたが、マスコミはそんな視聴者などおかまいなしに、怒涛の勢いで不正を嗅ぎつけては、国民に国の汚点を垂れ流している。
情報伝達に携わる人の中に、良いニュースの伝え方を知っている人がどれ程いるのだろうか、などと思ってしまうくらいに、最近耳にするニュースは暗いものばかりだった。
新聞も、ニュースで流れている事を活字にしただけなので、大抵どちらかで事足りるというのが俺の感想だ。テレビで大きな事件の内容を聞き、新聞では地方で起きた事などを読むという動作を一遍に行い、2つの感覚器から同時に情報を得るという、なんとも器用な行動を取りながら時間を潰した。
新聞を満遍なく読み終わり、テレビで流れていたニュースもそこそこ頭に入ったので、新聞を綺麗に折り畳んでテーブルの上に置き、リモコンに手を伸ばした。
テレビの電源を切ろうとした時、ニュースの内容が変わり、撲殺事件のニュースが現場との中継付きで流れ始めた。
「先日、この細い道で犯行は行われ、尊い命が奪われたのです。」
神妙な面持ちで語るニュースキャスターのいる場所は、俺の家からそう遠くなく、犯人の顔を拝んでから学校に行ってやろうと思ったが、これ以上のんびりしているとさすがに遅刻してしまう時間なので、テレビの電源を切って家を後にした。
学校は家から近くもないし、かといって遠いというわけでもない、中途半端な位置にある。登校していると、同じ制服の学生が自転車で勢いよく俺の横を通り過ぎる。まるで競輪選手のようだ。俺はというと、徒歩が好きなので、あまりにもギリギリの登校になりそうにならない限り自転車は使わず、歩いて登校している。
住宅街を抜けると、目の前に森、ではなく、公園の一端が見える。俺の通る道は公園があることによって二つに分岐され、右に分かれる道の隣には、大きなマンションがまるで公園を監視するかのような様で建っている。公園はというと、ほとんど手入れの行き届いていない状態で、片方に遊具が点々と設置され、もう一方には木がうっそうと生えている。木が生えている方は外から何も見えず、父兄の皆様方からの苦情が絶えないと聞く。
今日もいつものように、公園の、マンションとは反対側の道を通り、微かにできた木陰で暑さを軽減しながら登校していた。
今日もいつものように、うっそうと生える木の木陰が終わり、直射日光を浴び始めると同時に汗がにじみ出てくる。
今日もいつものように、誰もいない、ガランとした公園が俺の右側に姿を現した時、ふとその奥、マンション側の道に目がいった。
今日はいつもと違った光景が、そこにあった。
一人の女性が、まるで世界の終りが来たような顔をしながら、地面に座り込んだのだ。
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